酢快 第90号 2016年10月1日発行

体内に存在するクエン酸の秘密
わかば医院院長・医博 小島徹

その6 尿で分かる健康状態と疲れを癒すクエン酸

 今回は、東大名誉教授 故秋谷七郎先生が寄稿した雑誌の一部を要約してご紹介致します。
 秋谷先生は数年来、人間の健康と疾病の間に、簡単に判別できるものがあるのではないかと考え、尿のpHを種々の生活環境の下で観察されました。その結果、尿のpHは、食べている食物の種類によって変化するだけでなく、労働や運動の影響で極めて大きく変化することが判明したのです。
 健康な状態にあって、しかも激しい運動をしていない場合は、尿のpHは必ず7.0±0.2程度(弱アルカリ性)の範囲内であり、これは健康状態のよい時の血液のpHとも一致します。
 これに対して疲労時の尿のpHは5.8~6.4という酸性状態を示し、体液が極度の酸性状態にある糖尿病患者の尿も、同様に5.8~6.0の範囲を示します。
 このように、健康体の時なら弱アルカリ性の尿も、激しい運動や労働の後、また、油分、テンプラ、肉類、甘い菓子類などの酸性食品(食べ物そのものが酸性ではなく、食べた後に体の中で体液を酸性に傾ける食品のこと。ちなみに、梅干しはアルカリ性食品)を食べた後では、pH7.0以下の酸性方向に傾いていきます。この尿のpHは、市販されているBTB試験紙を使えば、誰でもすぐに検査できます。
 血液中の乳酸量が増えれば、自然に尿の乳酸量も増えていきます。一方で、クエン酸が確かに疲労を防止するとすれば、クエン酸を摂取することで尿中の乳酸量が減少すると考察されています。

疲れを癒すクエン酸

 また実際に、クエン酸の含有量がもっとも多い柑橘類の一つである夏ミカンを食べて、その影響を調べたところ、予想したとおりの結果が出たと述べておられます。
 しかし夏ミカンにはビタミンCも大量に含まれているため、この結果にはビタミンCが作用した可能性も否定出来なかったので、次にクエン酸そのものを水に溶かして飲んだところ、夏ミカンを食べた場合と同様の結果になったとの記述があります。
 また、カツ丼を食べて2時間後(食事内容が尿のpHにもっとも強く反映される時間)の尿のpHは5.8で、同じ様にカツ丼を食べ、同時に5gのクエン酸を飲んだ場合、pHは6.9~7.0のアルカリ性に傾き、カツ丼と夏ミカン一個を食べた場合も同様の結果が得られたともありました。
 入浴した後に一時的にだるい感じを覚えるのは、体が温められることで新陳代謝が活発になった結果、体内の乳酸量が増えるためだと考えられたのです。夏に疲れを感じやすいのも、気温が高いために新陳代謝が激しくなり、乳酸量が増えるためなので、夏の暑さに負けないように、さっぱりした酢の物などを食べたくなるのは理にかなったことだと説いています。
 妊婦も新陳代謝が活発になり、体内の乳酸量が増加しがちな生理状態になるため、夏ミカンや梅干しなどの酸っぱい食べ物を好むようになるのかもしれず、スポーツ選手がレモンやオレンジを好んで食べるのも、疲労回復に役立つからだと考えられたのです。
 日本では昔から、毎朝梅干し一つを食べると健康に良いなどといわれてきました。これも同様にクエン酸の効用を説いていたということになるわけです。
 クエン酸を飲む場合は、1回の目安として2.5~5gを適量の水やお茶に溶かして常飲してもよいとおっしゃっています。
 クエン酸を毎日適量飲み続けることは、疲労回復のみならず、動脈硬化の予防にも大いに役立つと考察されたのです。

(参考資料:雑誌『食生活』1954年8月号)



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